入門用シューケアセットと箕子の憂い
とある一件でカタログギフトを頂いた。何を申し込もうかいろいろと悩んだのだけど、結局シューケアセットを頼むことにした。クリームも切れつつあったし、ブラシやクロスもボロボロになっているところだったからだ。
[エムモゥブレィ] M.MOWBRAY セントパトリックセット 4067 (Free)
- 出版社/メーカー: M.MOWBRAY(エム・モゥブレィ)
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入門用セットということだったが使いやすいと感じる。ただ、しばらく使ってみるともう少し立派なクロスが欲しいとか、クリームの種類を増やしたいとか、果ては今履いているものよりも高い革靴が欲しいとか、際限なく欲が出てくる。まるで韓非子に出てくる「箕子の憂い」である。
昔、殷の紂王が象牙の箸を作らせると、箕子はそれを知って不安にかられた。箕子はこう考えたのである。「象牙の箸は素焼きの杯にふさわしくないから、必ず犀の角や珠玉をちりばめた杯を用いようとするだろう。象牙の箸やちりばめた杯には菽(まめ)や藿(あかざ)のスープでは済まされないから、必ず唐牛(からうし)や象の肉や豹の胎児(はらご)のスープがととのえられるだろう。唐牛や象の肉や豹の胎児のスープを飲む身では、粗末な短い着物を身に付けて小屋がけの下で食事をすることはあるまい。必ず錦の頃もをいく重にもかさねて身につけ、大広間や高楼で食事をすることになるだろう。わたくしはその行く末がどうなるかと恐れる。だからこそ、その第一歩のところで不安を感じるのである」。五年ほどしてから、紂王は、おおぜいの娘を裸にしてたわむれ、囚人たちを残酷な刑罰でもてあそび、酒糟の山、酒の池を眺めてたのしんだ。紂王は、ついにこのようにして滅んでいった。
このままでは殷よろしく家計が破産の一途をたどってしまう(笑) 分不相応な欲求で身を滅ぼさぬよう、あるいは高まる欲求を鎮めるよう、おとなしく百科事典で靴の歴史でも調べてみたいと思う。
文献
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1966
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- 作者: 韓非,金谷治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1994/04/18
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- 作者: 韓非,金谷治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 作者: 韓非,金谷治
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- 作者: 韓非,金谷治
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