鶏のあばら骨

sed scientia est potentia

2018年1月に読んだもの

ここ数年思考力が落ちたような気がする。 仕事で効率的に成果を出そうとすると不必要なインプットとアウトプットが減る。 その結果、頭の中の「肥やし」が不足するばかりか、読み書きの能力すら衰える。

そこでリハビリのために簡単な読書メモを書き散らそうと思う。 鶏肋ではないが、あまり役には立たないものの捨てるには惜しい雑多な思いつきを残しておきたい。

アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号漂流記』(中公文庫BIBLIO

エンデュアランス号漂流記 (中公文庫BIBLIO)

エンデュアランス号漂流記 (中公文庫BIBLIO)

仕事での大炎上案件で事態の収拾に取り組んでいた時期に読んだ本。ヤバい状況のリーダーシップについてヒントが欲しかった。1914年に起きた英国船の南極漂流事件もある意味究極の炎上案件である。極寒の地だけど。

南極をさまようメンバは、目的地へ移動しながらも強い吹雪にみまわれる度に一次的に安全な場所でテントを張る。メンバ各々には日々の仕事が課されているが、中には気持ちが滅入りテントから出てこない者も出てくる。船長のシャクルトンは「きっと彼らは、われわれをしっかりとした土地でなんとか安全にすごせるこの場所へつれてきた幸運のことよりも、現在の不愉快なことを考えているのだろう」と愚痴るが、似たようなことは会社でも起きる。リーダーの心部下知らず。

ところで百科事典は南極で遭難した状況でも役に立つらしい。

  ① コミュニケーション:貨幣と交換に関する議論のテーマ

  ② 知識獲得:アメリカの町や政治家の歴史を学び暇つぶし

  ③ たばこの火種:硝酸ナトリウムで紙を強くしているのでマッチの代わりに

あと、主食はペンギン。

リーダシップに関する本なら次は金井寿宏『リーダーシップ入門』、山本七平『人望の研究』、マキャベリ君主論』あたりを読み進めたい。

リーダーシップ入門 (日経文庫)

リーダーシップ入門 (日経文庫)

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

細川義洋 『システムを「外注」するときに読む本』(ダイヤモンド社

システムを「外注」するときに読む本

システムを「外注」するときに読む本

とある社内システムを導入した後、振り返りのために読み始めた(こちらは炎上していない)。システム開発は発注者と受注者の共同作業だというメッセージは伝わってきた。

形式は小説。ビジネス小説という括りの中でも半澤直樹シリーズとは異なり、ビジネスのノウハウやハウツーをわかりやすく伝えることが目的の小説。ゴールドラット『ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か』が定着させたように思える。日本ではミスミグループ会長の三枝匡による『戦略プロフェッショナル』『経営パワーの危機』『V字回復の経営』が有名。界隈では経営小説三部作と言うんだとか。内容は悪くないのに小説が稚拙すぎて読みにくい代表例は佐藤義典『白いネコは何をくれた?』。

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

白いネコは何をくれた?

白いネコは何をくれた?

ヘレン・E・フィッシャー『愛はなぜ終わるのか:結婚・不倫・離婚の自然史』(草思社

愛はなぜ終わるのか―結婚・不倫・離婚の自然史

愛はなぜ終わるのか―結婚・不倫・離婚の自然史

生粋のダーウィン主義者が書いた本。そんな実証でいいのか?という箇所がないわけではない(ボノボがそうだからといって人間が同じとは限らんでしょう)が、とはいえ研究とは真理の一部を照らすサーチライトなので、そういう側面もあるかと素直に感心。

「結婚式場」『業種別審査事典』第7巻(きんざい)

別業界の業界研究をしていたときにおもしろい記述を見つけたのでメモ。

結婚式場紹介業(エージェント)に支払うあっせん料・インセンティブの相場は披露宴飲食代の7-8%。

かつて結婚式は新郎の家で行われていたが、大正末期から神社や旅館等で行われるようになった。いわゆる専門式場が増えたのは戦後で、昭和6年(1931年)に目黒雅叙園、昭和22年(1947年)に明治記念館がオープンした。ホテルでの結婚式が注目されたのは昭和35年(1960年)のことである。現在の結婚式のあり方は比較的最近成立したことがわかる。

次に読むべきはホブズボーム&レンジャー『創られた伝統』、平山昇『初詣の社会史』、石井研士『結婚式:幸せを創る儀式』だろうか。

創られた伝統 (文化人類学叢書)

創られた伝統 (文化人類学叢書)

結婚式 幸せを創る儀式 (NHKブックス)

結婚式 幸せを創る儀式 (NHKブックス)

埴谷雄高ドストエフスキイ:その生涯と作品』(NHKブックス

ドストエフスキイ その生涯と作品 (NHKブックス)

ドストエフスキイ その生涯と作品 (NHKブックス)

昨年の冬にカラマーゾフの兄弟を読み終わったので解説本?をいくつか探していた。

大審問官のストーリーで示される大衆支配の源泉「パン・奇蹟・権威」を現代風に言い換えると、レーニンの共産主議論になぞらえれば「パン・電化・党」であるとしたのはおもしろかった。

ただ、純粋な解説としては、光文社文庫版『カラマーゾフの兄弟』全5巻各巻の末尾に記載された訳者・亀山郁夫による解題の方がわかりやすい。