2018年1月に読んだもの
ここ数年思考力が落ちたような気がする。 仕事で効率的に成果を出そうとすると不必要なインプットとアウトプットが減る。 その結果、頭の中の「肥やし」が不足するばかりか、読み書きの能力すら衰える。
そこでリハビリのために簡単な読書メモを書き散らそうと思う。 鶏肋ではないが、あまり役には立たないものの捨てるには惜しい雑多な思いつきを残しておきたい。
アーネスト・シャクルトン『エンデュアランス号漂流記』(中公文庫BIBLIO)
- 作者: アーネストシャクルトン,木村義昌,谷口善也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/06/01
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仕事での大炎上案件で事態の収拾に取り組んでいた時期に読んだ本。ヤバい状況のリーダーシップについてヒントが欲しかった。1914年に起きた英国船の南極漂流事件もある意味究極の炎上案件である。極寒の地だけど。
南極をさまようメンバは、目的地へ移動しながらも強い吹雪にみまわれる度に一次的に安全な場所でテントを張る。メンバ各々には日々の仕事が課されているが、中には気持ちが滅入りテントから出てこない者も出てくる。船長のシャクルトンは「きっと彼らは、われわれをしっかりとした土地でなんとか安全にすごせるこの場所へつれてきた幸運のことよりも、現在の不愉快なことを考えているのだろう」と愚痴るが、似たようなことは会社でも起きる。リーダーの心部下知らず。
ところで百科事典は南極で遭難した状況でも役に立つらしい。
① コミュニケーション:貨幣と交換に関する議論のテーマ
② 知識獲得:アメリカの町や政治家の歴史を学び暇つぶし
③ たばこの火種:硝酸ナトリウムで紙を強くしているのでマッチの代わりに
あと、主食はペンギン。
リーダシップに関する本なら次は金井寿宏『リーダーシップ入門』、山本七平『人望の研究』、マキャベリ『君主論』あたりを読み進めたい。
- 作者: 金井寿宏
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2005/03/01
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人間集団における人望の研究―二人以上の部下を持つ人のために (ノン・ポシェット)
- 作者: 山本七平
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 1991/02/01
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- 作者: ニッコロマキアヴェリ,Machiavelli,池田廉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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細川義洋 『システムを「外注」するときに読む本』(ダイヤモンド社)
- 作者: 細川義洋
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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とある社内システムを導入した後、振り返りのために読み始めた(こちらは炎上していない)。システム開発は発注者と受注者の共同作業だというメッセージは伝わってきた。
形式は小説。ビジネス小説という括りの中でも半澤直樹シリーズとは異なり、ビジネスのノウハウやハウツーをわかりやすく伝えることが目的の小説。ゴールドラット『ザ・ゴール:企業の究極の目的とは何か』が定着させたように思える。日本ではミスミグループ会長の三枝匡による『戦略プロフェッショナル』『経営パワーの危機』『V字回復の経営』が有名。界隈では経営小説三部作と言うんだとか。内容は悪くないのに小説が稚拙すぎて読みにくい代表例は佐藤義典『白いネコは何をくれた?』。
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット,三本木亮
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/05/18
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戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2002/09/01
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経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
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V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 三枝匡
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2006/04/01
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- 作者: 佐藤義典
- 出版社/メーカー: フォレスト出版
- 発売日: 2008/10/21
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ヘレン・E・フィッシャー『愛はなぜ終わるのか:結婚・不倫・離婚の自然史』(草思社)
- 作者: ヘレン・E・フィッシャー,吉田利子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1993/05
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生粋のダーウィン主義者が書いた本。そんな実証でいいのか?という箇所がないわけではない(ボノボがそうだからといって人間が同じとは限らんでしょう)が、とはいえ研究とは真理の一部を照らすサーチライトなので、そういう側面もあるかと素直に感心。
「結婚式場」『業種別審査事典』第7巻(きんざい)
第13次業種別審査事典(第7巻) 【サービス関連(広告、コンサルタント)・学校・地公体 分野】
- 作者: 一般社団法人金融財政事情研究会
- 出版社/メーカー: きんざい
- 発売日: 2016/01/18
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別業界の業界研究をしていたときにおもしろい記述を見つけたのでメモ。
結婚式場紹介業(エージェント)に支払うあっせん料・インセンティブの相場は披露宴飲食代の7-8%。
かつて結婚式は新郎の家で行われていたが、大正末期から神社や旅館等で行われるようになった。いわゆる専門式場が増えたのは戦後で、昭和6年(1931年)に目黒雅叙園、昭和22年(1947年)に明治記念館がオープンした。ホテルでの結婚式が注目されたのは昭和35年(1960年)のことである。現在の結婚式のあり方は比較的最近成立したことがわかる。
次に読むべきはホブズボーム&レンジャー『創られた伝統』、平山昇『初詣の社会史』、石井研士『結婚式:幸せを創る儀式』だろうか。
- 作者: エリックホブズボウム,テレンスレンジャー,Eric Hobsbawm,Terence Ranger,前川啓治,梶原景昭
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1992/06/01
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- 作者: 平山昇
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2015/12/26
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- 作者: 石井研士
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2005/12
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埴谷雄高『ドストエフスキイ:その生涯と作品』(NHKブックス)
- 作者: 埴谷雄高
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 1965/11/02
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昨年の冬にカラマーゾフの兄弟を読み終わったので解説本?をいくつか探していた。
大審問官のストーリーで示される大衆支配の源泉「パン・奇蹟・権威」を現代風に言い換えると、レーニンの共産主議論になぞらえれば「パン・電化・党」であるとしたのはおもしろかった。
ただ、純粋な解説としては、光文社文庫版『カラマーゾフの兄弟』全5巻各巻の末尾に記載された訳者・亀山郁夫による解題の方がわかりやすい。
古代ローマ皇帝も朝起きたくなかった|マルクス・アウレリウス『自省録』
連休明けはつらい。私は少し長めに連休を取っていたことから、今朝は休みボケというか、なかなか仕事に行くスイッチが入らなかった。朝起きたくないために布団の上でしばらくグダグダしていたが、最後には観念して「出勤するフリだけするか」くらいの気持ちで遅刻しない程度の時間帯に起き上がった。
朝起き上がれずに寝具の中でもぞもぞするのは私のような怠け者だけかと思うが、実は古代ローマ帝国の五賢帝の一人マルクス・アウレリウスも朝は起きたくなかったらしく、こんな言葉を書き残している。
明けがたに起きにくいときには、つぎの思いを念頭に用意しておくがよい。「人間のつとめを果たすために私は起きるのだ。」自分がそのために生まれ、そのためにこの世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついっているのか。それとも自分という人間は夜具の中にもぐりこんで身を温めているために創られたのか。「だってこのほうが心地よいもの。」では君は心地よい思いをするために生まれたのか、それとも行動するために生まれたのか。小さな草木や小鳥や蟻や蜘蛛や蜜蜂までもがおのがつとめにいそしみ、それぞれ自己の分を果たして宇宙の秩序を形作っているのを見ないのか。
しかるに君は人間のつとめをするのがいやなのか。自然にかなった君の仕事を果たすために馳せ参じないのか。「しかし休息もしなくてはならない。」それは私もそう思う。しかし自然はこのことにも限度をおいた。同様に食べたり飲んだりすることにも限度をおいた。ところが君はその限度を越え、適度を過ごすのだ。しかも行動においてはそうではなく、できるだけのことをしていない。
結局君は自分自身を愛していないのだ。もしそうでなかったらば君はきっと自己の(内なる)自然とその意思を愛したであろう。ほかの人は自分の技術を愛してこれに要する労力のために身をすりきらし、入浴も食事も忘れている。ところが君ときては、款彫師が彫金を、舞踊家が舞踊を、守銭奴が金を、見栄坊がつまらぬ名声を貴ぶほどにも自己の自然を大切にしないのだ。右にいった人たちは熱中すると寝食を忘れて自分の仕事を捗らせようとする。しかるに君には社会公共に役立つ活動はこれよりも価値のないものに見え、これよりも熱心にやるには値しないもののように考えられるのか。
マルクス・アウレリウス『自省録』第五巻一(神谷美恵子 訳)pp.71-72
引用した文中にたびたび登場する「君」とは誰のことだろうか。それは執筆者マルクス・アウレリウス本人である。彼は紙とペンを用い、自分自身に向かって「起きよ、起きて自らのつとめを果たせ」と叱咤し鼓舞しているのである。なんと自分に厳しい、克己的な皇帝なのだろうか。
それもそのはず。哲人皇帝マルクス・アウレリウスが生涯を通じて実践したストア (Stoa) 派哲学は禁欲主義がその特徴であり、現代でも広く使われる「ストイック(Stoic)」という言葉の語源でもあるのだ。
文献
- 作者: マルクスアウレーリウス,神谷美恵子
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- 作者: 神谷美恵子
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世界の名著〈第13〉キケロ,エピクテトス,マルクス・アウレリウス (1968年)
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贈物が面倒に感じるのはそれが人付き合いを意味しているから
夏は贈物の季節でもある。お中元のCMが活発になるほか、3連休で旅行した人は友人・知人へのお土産を用意しただろう。お盆で帰省するときどんなお土産を用意しようか今から考えている人もいるかもしれない。しかし私はそうした贈物選びをしているときになにか息苦しさのようなものを感じてしまう。例えば「あの人には贈った方が良いのだろうか」「彼にはこの値段のものでも失礼に当たらないだろうか」「こんなものを選んで彼女に馬鹿にされないだろうか」といった逡巡をしてしまうのだ。私が感じるそうした面倒くささや息苦しさの背景には一体何があるのだろうか。
贈与の性質
物々交換を原初形態とする贈与の習慣は人類普遍のものだと考えられているが、その普及度や頻度は国によって異なる。西欧では貨幣経済の発展・普及とともに贈物の習慣は縮小したが、日本は貨幣経済が浸透した中世以降も贈物の習慣が根強く残った。例えば冠婚葬祭における通過儀礼に際しての贈答、お中元やお歳暮といった定期的に繰り返される贈答、また感謝や謝罪のしるしとしての贈答といった形で一般的に行われている。特に日本では贈物の内容で相手の気持ちや心情を推し量ることがある。贈答や返礼を行うべきときに行わないことは不義理・不誠実としてみなされることもあるなど、しばしば道徳的な性質を帯びることもある。
したがって我々が経験する贈与という行為は、社会的に強制され半ば義務化されたものであると言える。そして贈物がスムーズに授受されるとき、それは社会関係の安定化させ強化する機能を果たす。我々は意識的にせよ無意識的にせよ、人間関係の円滑化と結束の強化を目的として贈物を交換しているのだ。私が感じる贈与への息苦しさの理由もここにある。つまり、贈物選びを含んだ贈与行為それ自体が人付き合いを意味しているために、私は人間関係に付随したある種のしがらみを感じているのだ。
人類学の知見
ここで贈与交換を研究対象とした人類学の知見にも触れておこう。贈与交換のような経済活動に注目して人類学の手法を用いる分野を経済人類学と呼ぶ。代表的な研究者はマルセル・モースとレヴィ・ストロースである。
マルセル・モースは社会における贈与システムには贈与する義務、受け取る義務、返礼する義務という3つの義務があると主張し、特に返礼する義務の動因に注目した。すなわち彼はマオリ族の慣習を引き、「贈物には呪術的な性質があるため返礼がなされない場合には受け手に災禍がふりかかる」という信念が返礼の義務を生じさせていると説明した。お返しをしないことの気持ち悪さ、バツの悪さの背景には非合理的な潜在意識が関与しているということだろうか。
レヴィ・ストロースはモースの知見を批判しながらも継承・発展させた。彼は贈与交換の体系を説明する際、物品の交換だけでなく女性の交換をも射程に収めたのである。ある部族が生き残り発展するためには周囲の部族との継続的な結束や同盟が重要であり、そうした集団間のつながりの維持・強化のために物品と女性の交換が行われたと説明した。現代の一部の企業でも人事交流のための研修や出向といった形式で人材の交換が行われることを思い出す。
非合理な経済活動
贈物の交換は必ずしも経済合理性に従って行われるわけではない。もし人々が経済合理性のみに従うのであれば無償の贈与は行われないし、たとえ贈与が発生したとしても受け手はもらいっぱなしが得とばかりにお返しを用意したりはしないだろう。しかし現実には活発に贈物のやりとりが行われている。このことは何を意味にするのか。カール・ポランニーは、互酬性に基づく贈与交換が再分配や市場交換と並立し独立した経済統合原理である解釈した。つまり我々の経済活動(財の交換)は合理的な利潤追求のみによって成り立っているのではなく、人間関係・感情・信念といった非合理的な要素によっても突き動かされるである。
文献
- 作者: マルセル・モース,森山工
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- 作者: クロード・レヴィ=ストロース,福井和美
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人間の経済 I 市場社会の虚構性 (岩波モダンクラシックス)
- 作者: カール・ポランニー,玉野井芳郎,栗本慎一郎
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人間の経済 II 交易・貨幣および市場の出現 (岩波モダンクラシックス)
- 作者: カール・ポランニー,玉野井芳郎,中野忠
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入門用シューケアセットと箕子の憂い
とある一件でカタログギフトを頂いた。何を申し込もうかいろいろと悩んだのだけど、結局シューケアセットを頼むことにした。クリームも切れつつあったし、ブラシやクロスもボロボロになっているところだったからだ。
[エムモゥブレィ] M.MOWBRAY セントパトリックセット 4067 (Free)
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入門用セットということだったが使いやすいと感じる。ただ、しばらく使ってみるともう少し立派なクロスが欲しいとか、クリームの種類を増やしたいとか、果ては今履いているものよりも高い革靴が欲しいとか、際限なく欲が出てくる。まるで韓非子に出てくる「箕子の憂い」である。
昔、殷の紂王が象牙の箸を作らせると、箕子はそれを知って不安にかられた。箕子はこう考えたのである。「象牙の箸は素焼きの杯にふさわしくないから、必ず犀の角や珠玉をちりばめた杯を用いようとするだろう。象牙の箸やちりばめた杯には菽(まめ)や藿(あかざ)のスープでは済まされないから、必ず唐牛(からうし)や象の肉や豹の胎児(はらご)のスープがととのえられるだろう。唐牛や象の肉や豹の胎児のスープを飲む身では、粗末な短い着物を身に付けて小屋がけの下で食事をすることはあるまい。必ず錦の頃もをいく重にもかさねて身につけ、大広間や高楼で食事をすることになるだろう。わたくしはその行く末がどうなるかと恐れる。だからこそ、その第一歩のところで不安を感じるのである」。五年ほどしてから、紂王は、おおぜいの娘を裸にしてたわむれ、囚人たちを残酷な刑罰でもてあそび、酒糟の山、酒の池を眺めてたのしんだ。紂王は、ついにこのようにして滅んでいった。
このままでは殷よろしく家計が破産の一途をたどってしまう(笑) 分不相応な欲求で身を滅ぼさぬよう、あるいは高まる欲求を鎮めるよう、おとなしく百科事典で靴の歴史でも調べてみたいと思う。
文献
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- 作者: 韓非,金谷治
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- 作者: 韓非,金谷治
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四分円法をめぐる雑談
A この前ブログで四分円法のことを取り上げたんだけど。
B うん。
A 調べてみたらアレ、出典が見つからないのよ。どうもアイゼンハワーの作じゃないっぽいんだよね。
B あーあるよねそういうの。ライフハッカーみたいな慣れないことを書いてたらガセネタを掴まされたわけだ(笑)
A 出典が怪しい名言みたいなのって他にもあるよな。「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」みたいな格言の語源が老子だなんて紹介している名言サイトみたいなのを見たことあるんだけど、んなもん『老子』には載ってないからね。
B まぁ例のマトリックスについては日○アソ○エとかにも出てくるし、役に立つんだったら誰が作ったかなんてのは割とどうでもいいことなんだろうけど。
A ところで、仕事を分類する軸って重要性と緊急性以外にはどんなものがあるんだろうね。
B うーん、どうだろう。(指折り数えながら)難易度、上司の関心度、予算規模、想定所用時間、プロジェクト参加人数、顧客との相性、自分の得意分野か否か、社内の嫌なヤツと関わらなくていいかどうか・・・。
A だんだん愚痴っぽくなってきたな(笑) じゃあ「目立つかどうか」と「おもしろいかどうか」ってのはどうかな。トム・ピーターズの『セクシープロジェクトで差をつけろ!』じゃないけどさ。
B それはあんまり意味が無いだろうなぁ。
A なんで?
B だってそれだと全てのタスクを「地味」かつ「つまらない」の象限に投げ込まなきゃいけなくなっちゃうじゃないか。
文献
- 作者: 老子,蜂屋邦夫
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トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈2〉セクシープロジェクトで差をつけろ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (2))
- 作者: トムピーターズ,仁平和夫
- 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
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アイゼンハワーは四分円法を本当に使っていたのか
前回投稿した記事ではアイゼンハワーがよく用いたとされるタスク管理法「四分円法」を紹介した。
実は書籍やネット上でこのテクニックが紹介されるとき、アイゼンハワーが述べたとされる次のような言葉が添えられることが多い。それは「重要なことが緊急であることは滅多にないし、緊急なことが重要であることも滅多にない (What is important is seldom urgent and what is urgent is seldom important) 」というものである。重要性と緊急性を区別する考え方がよく表現されているというのだ。
しかし私が種々の百科事典でアイゼンハワーについて調べたとき、上述の言葉や四分円法についての記述は見当たらなかった。日本の百科事典はおろか、Encyclopedia of Britannica や Encyclopedia Ammericana にも記述が見当たらないのは不思議である。
そこで気になったので調べてみた。海外にはよく引用される言葉の初出や出典元を調べるサイトが存在するのだが、アイゼンハワーの例の発言については以下の記事で詳細な調査が行われている。
What Is Important Is Seldom Urgent and What Is Urgent Is Seldom Important | Quote Investigator
この記事によると、例の発言に近い文脈で最初に登場したのは1954年の世界教会会議第二回大会での演説においてだった。
I have two kinds of problems, the urgent and the important. The urgent are not important, and the important are never urgent.
「私は2種類の問題を抱えている。それは緊急な事柄と重要な事柄である。緊急な事柄は重要ではないし、重要な事柄は決して緊急ではない。」(引用者訳)
オリジナルの発言をそのまま受け取れば、重要かつ緊急の案件というのは存在しないことになってしまう。「重要な事柄は決して緊急ではない (the important are never urgent) 」からだ。したがってアイゼンハワーの考え方からすると例の四分円法による区分けはナンセンスということになる。
今となっては確かめようのないことだが、四分円法をアイゼンハワーがよく行っていたというエピソードのは単なるフォークロア(民間伝承)に過ぎず、事実とは異なる可能性があるのではないだろうか。
もし「ゆう活」に巻き込まれてしまったらアイゼンハワーの四分円法を試してみよう
残業を削減するために夏季限定で朝型勤務を奨励する取り組みが、7/1より国家公務員を対象に実施された。いわゆる「ゆう活」である。「ゆう活」の背景には長時間労働を抑制する目的や日本版のサマータイム制を実現するといったねらいがある。
国の行政機関だけでなく民間企業や自治体においても、残業時間の削減や効率的な働き方の実現をねらって夏場の勤務時間を早める取り組みは既になされているだろう。今回、政府が少々気合の入ったキャンペーンを行っていることで多少なりとも夏場の朝型勤務を推進する動きが広がる可能性が考えられる。
奨励されうる朝型勤務は、おおよそ次のような2つのパターンのいずれかまたは両方に該当すると考えられる。すなわち、①就業時間を早めるパターン、②通常の業務時間の後に行っていた残業時間を始業前に移動させるパターンである。特に後者は現実的なパターンであるが、このばあい時間外労働の「お尻」が自動的に始業時間になってしまう。極めて好意的な見方をすると、この制度によって労働者が終業後についダラダラと残業してしまいがちな悪習慣が是正されるというわけだ。
運悪く職場で朝型勤務が強く奨励されてしまった場合、上述のいずれのパターンであったとしても我々労働者は今まで以上に効率的に仕事を行うことが求められるだろう。日々の仕事の中で効率的にタスクを処理するためにはどうすればよいのだろうか。そこで有効なのが「四分円法」によってタスクを仕分けする手法である。四分円法とは緊急性と重要性という2つの軸によって取り組む仕事に優先順位を付ける方法である。アメリカ合衆国第34代大統領アイゼンハワーがよく行っていたテクニックと言われている。そのため四分円法はアイゼンハワー・マトリックスとも呼ばれる。下のような図であれば見たことがある方も多いのではないだろうか。
二次元マトリックスを用いて自分が抱えているタスクを仕分けすると、容易に優先順位を付けることができる。「緊急かつ重要」の象限に入る仕事はいますぐ実行する、「緊急ではないが重要」の象限に入るものは実行計画を立てる、「緊急でも重要でもない」の象限に入るものは実行しない、「緊急だが重要ではない」の象限に入るものは誰かに任せてしまう、といった具合だ。限られた時間的資源を有効に使うため、一度使ってみる価値はあるだろう。
文献
- 政府広報オンライン「ゆう活 - はじめよう!夕方を楽しく活かす働き方」http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/u-katsu/
- 作者: ローター・J・ザイヴァート,ヴェルナー・ティキ・キュステンマッハー,小川捷子
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2003/02/24
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